運用解説
1安全措置不適
(1)
この細目は、適用事項各号を重複して適用することができる。例えば、シートベルトの着用を忘れ、ハンドブレーキを戻さないで発進しようとした場合は、[帯]+[手B]=15点となる。
(2)
[ギア]などはエンジン始動のたびに対象となる。
(3)
シートベルトは、後退時など必要があるときには外すことができるが、外したまま発進した場合は減点することとなる。
(4)
一般課題から特別課題を連続して実施できる場合とできない場合における不平等な取扱いが生じないようにするため、特別課題においてこの細目は、注意を与えるのみで減点はしないものとする。
2運転姿勢不良
(1)
この細目の適用は、適用事項各号につき1回のみとすること。
(2)
この細目の適用に当たって留意することは、運転姿勢の悪い習慣の有無を評価することであり、時たま生じた現象を直ちにチェックすることがあってはならない。したがって、[二輪姿勢]の[着座]及び[立ち姿勢]を除いては[四輪姿勢]を含み走行の後半で適用されるべきである。
3アクセルむら
(1)
この細目は適用事項ごとの特別減点細目であるから[急発]、[ノック]及び[空転]がそれぞれ1回ならばチェックするだけで減点なし、同一事項にチェックマークが2回以上になったら、最初の1回を含めて全部減点する。例えば、[急発]1回+[空転]2回になると減点10点、[空転]が3回目になると15点であるが、[急発]1回+[空転]2回の場合は[空転]のみの10点である。
(2)
車体ノックは連続3回以上で1回の適用になる。
(3)
この細目の内容は、検定車に不慣れなことから生じることもあり、適用に当たっては技量程度の判定が本旨であるから、適用事項に示された数的基準に固執するあまり、単なる現象のチェックに陥ることのないように留意しなければならない。このことは減点適用基準の全てにおいていえることであるが、[空転]の細目で例えるなら空ふかしの判断基準を「おおむね3000回転」と示しているが、これはエンジン回転計が機械的に示す数値そのものによって判断するよう求めているのではなく、3000回転という数値はあくまでも統一的判断の目安であって、普通免許用標準検定車による検定員の体験的基準である。空ふかしといってもエンジンの種類によって一律ではないので、あえて「おおむね」という表現で数値を示しているのは上述した趣旨によるものである。したがって、検定車に加速度計やエンジン回転計を装着しての、計器による判断は好ましくない。
4エンスト
(1)
この細目は、細目単位の特別減点であるから、エンストを2回以上しなければ減点にはならない。つまり、1回は減点無し、例えば、所内では2回で10点、3回で15点となり、路上では2回で20点、3回で30点となる。ただし、おおむね同一場所で4回になると「発進不能」の適用となる。この場合は、指定速度からの急停止における停止時のエンスト及び脱輪(大)防止時(脱輪(中)にとどまった場合をいう。以下同じ。)のエンストも4回に含めて適用する。
(2)
指定速度からの急停止では、全制動でクラッチを切らなくてもよいので、エンストしても適用しない。
(3)
脱輪(中)となった場合は、直ちに停止する条件になっているのでクラッチを切らずにエンストしても適用しない。
5逆行
(1)
この細目は、人為的又は物理的な原因によって、進行しようとする反対方向へ検定車が移動したときに適用する。
(2)
おおむね同一場所で逆行を繰り返した場合の測定方法は、例えば、最初に0.2メートル、続いて0.3メートル、更に0.2メートルと逆行した時は、そのすべてを合計すると(逆行が1回のみで、距離が0.3メートル未満の場合は適用しないが、連続した場合は加算する。)0.7メートルとなり「逆行(中)」に該当することとなる。
(3)
逆行を連続した場合、逆行と逆行との間に進行しようとする方向へ車体が動いた距離があっても(発進が不完全な状態をいう。)それには関係なく、逆行した個々の距離を合計するものである。
6発進手間取り
(1)
この細目は、細目単位の特別減点細目であり、適用事項に関係なくチェックマークが2回以上になれば1回目から減点する。
(2)
発進時期の基準はその場の状況によって一律ではないが、検定員が発進可能と認めた時点とするのが妥当である。ただし、この減点細目の趣旨は安全を確保した上で、正常な時期に円滑かつ機敏に発進しないもの、つまり、判断、動作の鈍いものを対象とするものであるから、「おおむね5秒」、「おおむね15メートル」という数字にとらわれ過ぎないようにしなければならない。また、エンストをした場合又は逆行などをしている間はこの細目の対象とはならないが、坂道で停止し発進までに時間がかかり過ぎている場合には適用する。
(3)
二輪車で、始動時にギアをニュートラルにする必要があるものについては、第3項から除外してある。したがって、注意を与えることもできないのでおおむね1分を過ぎると発進不能となる。ただし、ギアをニュートラルにする必要のないプライマリー式及びセル式については第3項を適用することとなる。
7発進不能
(1)
この細目の趣旨は、交差点などで発進手間取りがあり注意を与えたのにもかかわらず、現実に他の交通に迷惑を及ぼしたり、他の交通があれば迷惑を及ぼすであろうと認められる場合に適用するもので、適用事項にいう状況はいわば具体的例示である。
(2)
第4項は主に二輪車(始動時にギアをニュートラルにする必要があるものに限る。)又は備考2に該当したものが対象である。
(3)
この細目のエンスト4回には、指定速度から急停止時及び脱輪(大)防止時におけるエンストを含むものである。
(4)
特別課題で、経路確認のためおおむね3分を過ぎても発進しない場合は注意を与えて細目「発進手間取り」を適用し、さらに、その後おおむね5秒を過ぎても発進しないときは、第4項の[発進]を適用する。この場合におおむね3分の計測は、起点では検定員が所定の説明を終了して、受検者が経路確認を始めた時からとし、起点以外では検定車両が停止した時からとする。また、3分以内に通常の発進をすることができれば、このことについては何も適用する細目はない。
8指定時間過不足
(1)
この細目を適用する場合の時間の測定方法は、例えば大型二輪車で、直線狭路台平坦部を走行していた時間が7.6秒とすると、2.4秒の不足となり端数を切り上げると3秒になるから、5点×3秒=15点の減点となる。また、連続進路転換コースでは、入口のロード・コンから出口のロード・コンまでを走行していた時間が8.2秒とすると、1.2秒の超過となり端数を切り上げると2秒になるから、5点×2秒=10点の減点となる。
(2)
直線狭路台及び連続進路転換コースでのギアの指定は行わないものとする。
9速度維持
(1)
課題外
ア この細目は、技量未熟により正常な走行速度にすることができない(速度をあげるとハンドル操作又はブレーキ操作に支障に支障がでる)者を対象とする趣旨であるから、検定コースの形態が気になったり、走行順路に不安があったり、検定を意識し過ぎるなどのため加速をためらいがちになる受検者心理を考慮した適用が必要であり、このようなことからこの細目は、細目単位の特別減点となっているのである。しかし、交通状況の許す限り機敏な力強い加速で発進し、走行しないときや、交通の流れに同調しながら進路を変える必要があるのに加速しないときなどには適用すべきである。
イ 備考で「注意を与える」というのは、現実に交通の流れを妨げ又は他の交通があれば流れを妨げるであろうと認められる場合とする。
(2)
課題
ア 指示速度による走行は、指定区間内(指定区間の始点、終点を定めるのは適当ではない。)で一時的でも指示速度に達すれば適用しないものとする。したがって、指示速度は指定区間内で通常出し得る速度のおおむね上限とするのが適当である。また、ギアの指定又は固定化も適当でない。ギアチェンジは積極的なエンジンブレーキを除き、あくまでもスピードに対応して行わなければならないものである。前進4段変速の普通車で、指示速度が30キロメートル毎時未満のようなコースをトップギアで走行させ又は狭路コースをセカンドギアで走行させることの妥当性を考慮する必要がある。
イ 指定速度にからの急停止の場合は、課題目的からみて許容範囲を定めていない。したがって、指示速度に達しない速度で急制動開始線にさしかかったもの又は指定速度には達しているが急制動開始線の手前(おおむね1車長以上手前とする。)でブレーキ操作したものに対しては、この細目を適用したうえ、再度この課題を履行させることとなる。
10指定速度到達不能
この細目は、指定速度からの急停止で細目「速度維持(課題)」の適用事項2のいずれかを適用し、再度課題を履行させたが2回目も同じく適用事項の2のいずれかに該当したときに適用する。ただし、1回目の「速度維持」を適用した時点で合格基準に満たない成績となった場合には、やり直しをしないこととする。
11合図不履行等
この細目の[変更合図]及び[右左折合図]について、所内検定においては適用事項ごとの特別減点細目である。例えば、[右左折合図]の中の[しない]、[続]、[もどし]、[不適]がそれぞれ1回ならばチェックするだけで減点なし、同一適用事項にチェックマークが2回以上になったら、その適用事項については最初の1回を含め全部減点することになる。
(1)[発進合図]
ア 法令上は発進合図の規定はないが、路端から発進するためには進路変更を伴うものであるから、進路変更に準じた合図を行わせるものである。
イ 備考で、他の交通の状況によっては適用後注意を与えるように定めているが、これは所内検定についてのことで、路上検定の場合は「採点」(運転免許技能検定実施基準7)に定める「路上検定における是正措置」によるものとする。このことは他の細目についても同じことがいえる。
ウ 特別課題において、設定した経路の確認のため路端に停止した後、発進する場合は、その都度、適用の対象となる。
(2)[変更合図]
ア 合図をしてから3秒未満で進路を変え始めた場合は[不適]とし、進路を変え始めてから合図をした場合は[しない]とする。ただし、交差点間の距離が短いなどのため、走行速度を下げても進路を変え始める3秒前に合図を行うことが無理な場合は進路を変え始める直前までに合図をすれば3秒未満でも[不適]は適用しない。
イ 駐停車時に左に合図したままでも[もどし]は適用しない。
ウ 適用事項4の中で、「合図をした時期が著しく早い場合」とは、合図が規定された時期よりも早いため、現実に他の交通に誤解を生じさせて交通上の危険因子となるなど、他車への配慮が足りないものを対象にする趣旨である。
したがって、合図が規定の時期より早くても、他の交通に影響を与えないことが明らかな状況の場合まで厳格に適用するということではない。このことは、[右左折合図]の適用事項4についても同じことがいえる。
(3)[右左折合図]
交差点間の距離が短い場合は、交差点の手前の側端からおおむね30メートル未満の地点で合図をしても[不適]は適用しない。
12安全不確認
(1)[発進]
ア 発進しようとしてエンストをし又は発進に手間取ったりした場合に、改めて発進する直前に右後方の確認をしないときにも適用する。
イ 特別課題において、設定した経路の確認のため停止して、発進する場合も、その都度、適用の対象となる。
(2)[後退]、[周囲]
ア 方向変換又は縦列駐車をする場合は、検定車が後退していく場所及び方向の安全については、後退を始める直前に確かめ、後退を始めたら停止寸前程度の速度で進行しながら車体の前部又は側方等を確かめ、最後に停止するまで後方を確かめる必要があり、その都度安全を確かめないときに適用する。
イ 方向変換又は縦列駐車以外の後退又は切り返しのときは、後退時の安全確認を実施するか否かの観察をする必要がある。
(3)[巻き込み]
ア 左折時に左折方向だけ目視し、交差道路の右方と車体左側の安全確認をしないときは、この適用事項の他に適用事項6の[交差点]も同時に適用する。
イ 二輪車については、当該適用事項の対象から除外する。
(4)[変更]
ア この適用事項は、右左折に伴う進路変更のほか進路前方の障害物を避ける場合及び路端へ駐停車する場合にも適用する。
イ 安全確認しているか否かは受検者の挙動及び視線の動き等を観察することによって判断が可能であるから、特に後方に対する配意のない者については厳しく評価する必要がある。
ウ 確認の方法は、バックミラーで後方を確認し、直接目視によりバックミラーの死角となる車体側方を確認するものとし、この方法によらない場合は適用する。
(5)[交差点]
ア この適用事項は他の「優先判断不良」、「横断者保護違反」等の細目と併せて適用する場合がある。
イ 一時停止指定場所で発進直前に左右の安全を確認しない場合又は黄点滅信号で交差点に入る直前で左右の安全確認をしない場合も適用する。
(6)[後方]
ア この適用事項は、走行中に信号が黄色に変わった時又はブレーキをかける場合等のほか後方の状況を知る必要がある場合にバックミラーを見ない者が対象であり、進路変更時を除き走行中にまったく後方に対する注意をしなくても検定中の適用は1回である。
イ 走行中の後方確認は、最小おおむね500メートルに1回が適当である。
ウ この適用事項に限らずこの細目を適正に評価するため、検定車には運転視線観察機(検定員が受検者の視線を観察できるミラー)の装着が望ましい。
(7)[踏切]
ア 踏切では窓を開けたうえ左右を目視しなければこれを適用するが、窓は必ずしも全開しなくてもよい。確認後にエンスト、発進手間取りまたは逆行等で時間が経過した場合は、あらためて発進直前に再確認をしなければ適用する。
イ 窓を開けず、左右の目視もしない場合であっても、適用は踏切の通過ごとに1回とする。
(8)[脇見]
ア この適用事項は、屈折コース等で立体障害物と車体が接近する方向に注意を向けず、進行方向だけに気をとられているとき等のほか、車両若しくは歩行者等の飛び出しに対する警戒又は検定車に関係ある車両若しくは歩行者に対する予測に欠けた結果、「横断者保護違反」又は「側方等間隔不保持」等の細目を適用することとなった場合に、併せて適用する。
イ カーブミラーを活用しない場合も、この適用事項を適用する。
(9)[降車]
この適用事項を適用した場合に、現実に側方を通過しようとする車両があり、その車両に障害を与えるおそれがあるときは、検定員補助を行う。
13惰力走行
(1)
この細目でいうエンジンブレーキは、シフトダウンによる積極的なものではなく、アクセル加速を止めるだけの消極的なものをいうわけであるから、走行速度が低くなるとエンジンブレーキの効果は少なくなる。したがって、できるだけ高い速度からのエンジンブレーキを観察するため、所内検定ではそのコースの指定区間における指示速度から10キロメートル毎時減の速度を適用基準速度としたのであるから、速度指定区間以外でも適用基準速度以上から惰力走行をした場合には適用する。
(2)
この細目は適用事項ごとの特別減点細目である。(ただし、下り坂の惰性走行を除く。)
(3)
所内における指定速度が40キロメートル毎時以上となるコースでは、30キロメートル毎時を適用基準速度とする。
(4)
カーブ内でギアチェンジのため、必要な間クラッチを切ったとしても速度が十分に制御されていれば、この細目は適用しない。
14制動操作不良
(1)
この細目は重要な内容であるが、適用頻度が高いので適用事項ごとの特別減点となっている。例えば、[待]と[断]のチェックが1回ずつなら減点なし。同じ事項のチェックが2回以上になって減点することとなる。
(2)
適用事項1の趣旨は、安全に対する心構えが制動の構えとして行えるかどうかを評価するもので、具体的にはアクセルペダルを踏む必要がないときに足をブレーキペダルに移しておく習慣がついているか否かを評価するものであるから、ブレーキ操作が迫るまでアクセルペダルから足を離さない習慣のある者に適用するものである。したがって、二輪車は正しい運転姿勢を保てばブレーキペダルの上に足が位置しているので、ブレーキペダルについては適用の対象とはならないが、ブレーキレバーに指をかけない習慣のある者には適用する。
(3)
適用事項2の趣旨は、ブレーキ操作を早めに、かつ、1〜2回ブレーキを断続することによって後続車に停止する意思を警告して追突されることを防止すると同時に急ブレーキ及びタイヤロックを防止するという制動操作のよい習慣の有無を評価することにある。断続ブレーキ操作の方法は、ブレーキペダルを短時間にバタバタ踏むことではなく、制動の必要を感じたらエンジンブレーキに入るのと同時に軽くブレーキペダルを踏んで制動灯を点灯させて放す。制動時期にきたら第一次制動をかけ、制動効果が50パーセント程度になったところでいったんペダルを戻し、続いて第二次制動をかけて50パーセント程度の制動効果があったところで、またペダルを戻すという要領の反復操作(二挙動以上)で徐々に減速することをいうものである。したがって、一気にブレーキを踏むのと比べ途中でペダルを戻す分だけ早めにブレーキ操作にかかる必要が生じ、そのため余裕のあるブレーキ操作になり、副次的には後車に対する制動灯の点滅合図にもなるものである。ペダルの踏み加減又は戻す(ブレーキをゆるめればペダルからいちいち足を放さなくてもよい。)時期及び回数は、制動初速度及び交通の状況によって異なるが、一時停止又は制動の必要があらかしめ判っている場合は、合図→第一次制動→第二次制動(停止するときは更に第三次制動)程度の断続が望ましい。なお、停止時の衝動を防ぐため停止寸前にブレーキをゆるめる行為は、ここでいう断続操作とはみなされない。
(4)
備考1で適用速度を定めているが、適用速度未満では減点の対象としないというだけで、断続操作をしなくてよいということではない。また、断続操作を行っているかどうかの観察を制動灯の点滅のみによって行うのは誤りであり、断続操作を行い得るだけの交通の状況に余裕があったかどうかを配慮する必要がある。[]
(5)
適用事項3は、一時停止をしている時間の長短とか後車の状況によってブレーキペダルに足を乗せておくか、踏み込んでいるか、あるいはハンドブレーキをかけておくかのいずれかの習慣のないものに適用する。
(6)
適用事項4は、ブレーキペダルを踏める状態で発進又は停止をする習慣のないものに適用する。
(7)
適用事項5は、なめらかなブレーキ操作ができないもの(減速又は停止する度に、いわゆるカックンブレーキとなるような場合)又は走行中のシフトダウンが不適切なため(ギア間違いを含む。)ショックのある減速をしたものの適用するものであるから、検定車に不慣れなために生じたものにまで適用する趣旨ではない。
(8)
[クリープ]は、AT車としての特性を理解してクリープ現象を生じさせないよう、ブレーキを正しく使用することにより、停止状態を保持する習慣がついているか否かを評価するものである。
15前後ブレーキ不使用
(1)
この細目は制動を必要とする都度観察することになるが、適用は狭路コース内及び特別コース(指定速度からの急停止を除く。)など以外で、制動初速度がおおむね20キロメートル毎時以上の場合に行う。
(2)
二輪車の安全上、正確な制動操作には構造上の特性から前後輪ブレーキの同時使用が不可欠であるので、前輪及び後輪ブレーキをおおむね同時に使用する習慣のない者又は前輪ブレーキのみ若しくは後輪ブレーキのみ使用する習慣の者を対象とする。
16速度速過ぎ
(1)
この細目は極めて重要なもので、あらゆる状況のもとでその時々に適した安心感のもてる速度でなければ適用になるが、その判断基準を明示するのは至難である。なぜならば、同じ5キロメートル毎時の速過ぎにしても狭路コース内又は歩行者若しくは障害物とのニアミス等のときの影響は大であるが、周回カーブなどでの影響はそれに比べると小さいといえる。したがって、同一場所での同一状況のもとでは一定の数値を定めて判断基準とすることはできても、場所が異なり状況が異なってくると一律には定めがたいので、検定員の経験則による適切妥当な判断を必要とするものである。
(2)
この細目は結果現象の原因要素ともいえるので、他の細目と重複して適用することが多い。例えば、速度が速いためにハンドルがふらついたり、切り返したり、脱輪した場合などである。ただし、カーブで著しく速度が速いため車両通行帯からはみ出したときは、細目「速度速過ぎ(大)」を適用し、通行帯はみ出しは適用しない。
(3)
カーブでのブレーキ遅れは(大)の適用事項2を適用する。しかし、カーブの手前で必要な減速をした後にわずかにブレーキペダルを踏んでいるようなときは適用しない。
(4)
徐行の場所又は場合に「速度速過ぎ(小)又は(大)」となったときは、いずれも「徐行違反」の細目を適用する。
(5)
適用事項3は、波状路を走行中部分的に速い速度になった場合でも、突起部始端に前車輪がかかってから終端に前車輪がかかるまでの所要時間が、結果としておおむね5秒以上であれば、適用しない。
17急停止区間超過
指定速度から急停止の課題の趣旨からいえば、急停止限界線に車体の先端が掛かった時点で事故となっているはずであるが、多少の許容範囲を認めて前車輪の接地面部の一部又は全部が線を越えた場合に適用するもので、接地面部が線上にかかっているものには適用しない。
18暴走
まれに起こる現象であり、ほとんどは検定員補助と併用することになろう。なお、危険防止のため口頭により「止まれ」と指示したのにもかかわらず直ちに停止しなかったからといって検定中止事項の「指示違反」を適用するのは誤りであり、この場合も検定員補助となる。
19切り返し
(1)
ここでいう「切り返し」とは、四輪車が現状のまま進行を継続した場合に、接触又は脱輪を生ずるおそれがあると判断し、進路修正のために戻る行為をいうものである。
(2)
この細目の特徴は、同一狭路内コース内での切り返し1回(縦列駐車又はけん引車の方向転換でやり直しを指示したときの1回を含む。)は減点しないという点である。所内では、同一狭路コースにおける切り返しの回数でいうと1回は減点なし、2回で5点、3回で10点、4回で通過不能となる。また、すべての狭路コースで切り返し1回ずつ計3回でも減点なしとする。
(3)
同一狭路コース内における切り返し1回は減点しないが、切り返しの原因となった速度速過ぎや切り返しの際の安全確認等についての評価は行うものとする。
(4)
路上検定ではおおむね同一場所における2回の切り返しで「通過不能」の細目を併用するが、受検者の判断不良又は操作不良以外の他の交通の異常な行動等の要因により、切り返すことがその場の状況に適していると認められる場合には、運転免許技能検定実施基準第7に1の(1)のただし書きの採点の原則により減点しないものとする。
(5)
脱輪や接触をしたための復帰する行為は、「切り返し」を適用しないで「脱輪」又は「接触」の細目のみを適用する。
(6)
縦列駐車で駐車範囲の中央左端にいれるような指示はしてはならない。また、縦列駐車で左後車輪が脱輪(小)となり又は車体後部が接触(小)となって駐車範囲に入った場合は駐車が完了したものとし、それぞれ該当する細目を適用するのみでやり直しの指示はしないものとする。
(7)
後退しようとして最初に停止した地点から、更に前進した場合又は後退を終わって停止したが、更に後退した場合は、いずれも切り返しではない。
(8)
縦列駐車又はけん引車の方向転換で、検定課題履行条件が満たされないため、受検者の判断で切り返した場合も適用する。
20急ハンドル
カーブなどでスピードコントロールの悪さをハンドル操作でカバーしようとして、結果的に急ハンドルの状態になったときはこの細目によらず「速度速過ぎ(大)」を適用する。
21ふらつき
(1)
この細目の適用は「小」の適用事項2を除いて、四輪車のハンドル操作の安定度を評価する上で重要なものである。
適用事項1の(1)がいわゆる「ふらつき」でカーブ走行中などに生じやすく、(2)がいわゆる「とられ」をいうもので右左折を終わった直後などに生じることが多いが、ギアチェンジ時にも生じることがある。
(2)
スピードコントロールが不十分なため「ふらつき」又は「とられ」が生じたときは、この細目と併せて「速度速過ぎ」又は場所によっては「徐行違反」の細目を適用する。
(3)
二輪車のバランス保持の観察は、カーブ又は右左折時などを重点にするのが望ましい。また、単なる足つきには適用しない。
(4)
適用事項2の(2)は、「車体の傾斜を立て直すなどのため、瞬間的に足を接地することにより走行を継続することが可能な状態」のことである。
22転倒
(1)
適用事項中「バランスを失い車体が横倒しになるのを防止するため、足を接地して支えた場合」とは、「足を踏ん張って支えなければ横倒しになってしまう状態」であり、通常は停止することが考えられる。
(2)
乗車時又は下車時に車体を支えきれずに転倒したときも適用する。
23通過不能
(1)
狭路コースの入り口から出口までとは、車体の一部が狭路(すみ切り部を含む。)に入ってから、車体の全部が狭路(すみ切り部を含む。)から出るまでとする。
(2)
この細目でいう「切り返し」には、脱輪や接触をしたための復帰する行為が含まれるから、例えば、方向転換コースで切り返し3回と脱輪したための復帰する行為1回で適用となる。したがって、理由を問わず同一狭路コースで戻ってやり直す行為を4回繰り返すことによって適用することとなる。
(3)
適用事項3の(4)は、四輪車でいうなら切り返しをしなければならないような場合をいうものであり、二輪車を後退させたときや停止して足を接地させながら車体を極端に傾斜させるなどして障害物を避けて通過した状態をいう。
24停止位置不適
(1)
この細目でいう停止線とは、道路標識の停止線(406の2)、道路標示の「停止線(203)」(交差点内で停止する場合の位置を示す線を含む。)及び「二段停止線(203の2)」によるものと、道路交通法施行令第2条第1項の表の備考に定める停止位置とする。
(2)
この細目は停止線ギリギリに車体先端をつけさせるのが趣旨ではない。むしろ停止線の手前おおむね2メートルの範囲(線の手前約0.5メートルから1メートル程度の余裕をとるのが適当である。)に停止することが求められているのである。
(3)
前車に続いて停止するのは、この細目にいう停止とはならない。
(4)
適用事項2については、立体停止目標(発着点には停止線を設けないこと。)に対する車体感覚を評価する意味で厳しく適用する必要がある。ただし、路上検定では検定課題履行条件にないため適用しないこととする。
(5)
一時停止の指定場所以外の交差点で、安全のため一時停止した場合の停止位置が交差道路に一部入っていても減点にはならない。ただし、車体の一部が交差道路に入ったため歩行者の妨げたときは「歩行者保護不停止等」の細目の適用事項4又は6を、また、車両の通行を妨げたときは状況により「優先判断不良」又は「進行妨害」の細目を適用する。
25巻き込み防止措置不適
(1)
適用事項1は、四輪車が左折する際に
ア すでに交差点直前に停止している二輪車がある場合は、その後方で停止し二輪車を先行させないとき
イ 交差点直前で停止している検定車の左側に二輪車が進入してきた場合に、その二輪車を先発させないときに適用する。
(2)
適用事項2は、左折のため進路を変えたが、左側への寄り方が不十分な場合(おおむね1メートル以上離れているとき又は二輪車が進入してきたとき)に適用する。
26側方等間隔不保持
(1)
この細目は、障害物との間隔だけが対象であるから側方通過時の速度については別に評価しなければならない。必要な間隔を保っていれば通常の速度で走行しても差し支えない(間隔を保てるのに保たない場合でも安全な速度であれば適用しない。)が、道路及び交通の状況によって必要な間隔を保つことができない場合は、間隔に適した安全速度にしなければ細目「速度速過ぎ」の(大)又は(小)いずれかに該当するものを適用することとする。ただし、間隔がおおむね0.5メートル未満で速度が速過ぎていれば検定員補助が適当である。
(2)
追越し時の側方間隔(おおむね1メートル以上)不保持は、「追越し違反」の細目の適用事項4を適用する。
27脱輪
(1)
沈みコースにあっては脱輪(小)の名称を「接輪」とすることができる。
(2)
縦列駐車を完了したとき又は路端へ駐車したときの左前車輪の脱輪(小)については適用しないが、車輪を縁石等に強く接触した場合は、「速度速過ぎ(小)」の細目を適用する。
(3)
脱輪してから停止するまでの距離の計測は、コース外だけでなくコース内を走行した距離も含まれるものである。
(4)
脱輪(中)となったときのやり直しは、脱輪した車輪が乗り上げたり逸脱したりした地点まで戻れば、一応履行条件を果たしたこととなるので、それ以上どこまで戻るかは受検者の判断にまかせることとなる。
(5)
「脱輪(大)」の細目の適用事項2及び3は、脱輪後の距離に関係なく適用する。つまり路上検定及び二輪車の検定において、脱輪したときはすべて脱輪(大)となるのである。
(6)
直線狭路台では台から落輪したとき、波状路コースでは突起部の両側端から落輪したとき又は突起部以外の平坦な場所(白色の線若しくは金属性の枠により表示されているコース側端)から車輪の接地面部の一部がはみ出したときにそれぞれ適用する。
(7)
連続進路転換コースでは、中心線の設定位置を縁石等からおおむね2メートル以上に設けることとしたので、コースの規模等の違いから同一の条件にすることが困難になったことにより、脱輪(大)及び脱輪(小)については適用しないこととする。
クランクの絵と一本橋の絵 S字の絵
一本橋 長さ15m 幅30cm
28接触
(1)
大・小の区別は接触都度の強弱によってつけることとなるが、所内に設置した立体障害物でも路上において電柱等に接触したことを思えば、バンパーがすったとき以外はほとんどが接触(大)である。その他ロード・コンをはね飛ばし、踏みつぶし、転倒させ若しくは大きく移動した場合又は固定障害物を押し曲げたりしたときはすべて接触(大)を適用する。
(2)
この細目の適用事項でいう「車体」とは、車両の最も外側の部分とする。(以下同じとする。)
29路側帯進入
(1)
この細目に係る道路標識はなく、道路標示は「路側帯(108)」、「駐停車禁止路側帯(108の2)」及び「歩行者用路側帯(108の3)」である。
(2)
この細目は、車体感覚の不足している者又は路側帯表示を理解していない者に適用するのが趣旨である。
(3)
この細目の適用は、路上のみに限るものとする。
30通行帯違反
(1)
この細目の適用事項1,2,4は、通行区分に対する関心の不十分な者が対象で、3は車体感覚又はカーブの技量の不足している者が対象である。
(2)
カーブ等で、「速度速過ぎ(小)」又は「ふらつき(小)」のため、車両通行帯からはみ出した場合はこの細目を適用するが、「速度速過ぎ(大)」、又は「ふらつき(大)」のためはみ出した場合は、この細目によらず原因となった細目を適用する。
(3)
適用事項2に係る道路標識は「車両通行区分(327)」及び「専用通行帯(327の2)」で、道路標示は「車両通行区分(109の3)」及び「専用通行帯(109の4)」である。
31追いつかれ義務違反
(1)
検定車がその道路のおおむね最高速度で走行中に、追いついてきた車両が追越しをしようとした場合は、危険防止のため進路を譲るように注意を与えるのみとする。
(2)
この細目の適用事項2は、検定車が左側寄り通行をしていない場合に、現実に追いついてきた車両に進路を譲らないときに適用するものであるから、追いついてくる車両がないときには、左側寄り通行をしないというだけでは適用する細目はない。
(3)
左側寄り通行違反のみに適用する細目はないが、左側寄り通行について付言すれば、その趣旨は対向車との衝突を防止するため道路の中央部分をあけることにあるが、左側端寄り過ぎてはかえって危険ともいえる。したがって、並進できる道路では道路の左側部分の左寄りを、並進できない道路では道路の左側部分のおおむね中央部分をそれぞれ通行するのが適当である。
32バス等優先通行帯違反
(1)
この細目に係る道路標識は「路線バス等優先通行帯(327の3)」で、道路標示は「路線バス等優先通行帯(109の5)」である。
(2)
「路線バス等」とは、路線バス、通学(園)バス及び補助標識に記載されている自動車をいう。
33軌道敷内違反
路面電車が存在しない地方では、この細目を削除することができる。
34右側通行
(1)
適用事項1は、原則として「中央線(205)」の道路標示がある道路で適用する。
(2)
適用事項3に係る道路標識は「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止(314)」で、道路標示は「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止(102)」である。
(3)
はみ出し方が必要以上に大きいというのは、例えば可動物との間隔はおおむね1.5メートルが適切と認められる場合に、その2倍以上のおおむね4メートル以上の間隔をあけたため、道路の右側部分にはみ出したときをいう。
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